鍋を支配した主婦の座

かつては鍋を支配した主婦の座

鉄鍋を用いて煮炊きした時代は長く、しゃもじが主婦権を象徴したのと同じく、
鍋も主婦の座を揺るぎないものとしました。

 

農家などの囲炉裏でそのうちの主婦が座る場所を鍋座、鍋代、女座といいますが、
鍋の前にしっかりと座って、家族の食事をつかさどる主婦の姿は立派で、たのもしいものでした。
すなわち、鉄鍋の時代は鍋そのものがひとつの所帯を意味したことが分かります。

 

鍋の裏の火にあたる部分を「鍋尻」といいますが、「鍋尻焼く」といえば夫婦の仲むつまじい姿。
「鍋尻の世話を焼く」といえば、他人の所帯のことまでくちばしを入れるということになります。

 

今では主婦の座も鍋とは無関係になりましたが、食卓に鍋を持ち出すだけで心浮き立つものがあります。
一つの鍋を、そしてひとつ火を囲むということは、現代では、とかくばらばらになりやすい
家族意識や仲間意識を取り戻す大切な役目を持つようになりました。